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くるるる星座

     スザルルにくらっと落とされた管理人によるスザルルサイト。 浮気できない性質なのでスザルルのみ。 ラブラブ甘々でたまにシリアスな感じで展開していきます。無断転載等はご遠慮ください。 ※リンクフリーですが、報告をいただければ幸せです。 ※オンラインブックマークは厳禁です。

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絆11

絆~ゆかり~⑪

 

 

 

ゼロが眠りに付いた後、ルルーシュは献身的に彼の看病をした。
死にいたるほどの負傷ではないものの、発熱がひどい。
下着姿のままのゼロにシーツを掛けようとしたとき、ルルーシュは体の半分以上を覆う包帯から覗く沢山の古傷に気が付いた。

それは確かに古傷で、ここ最近できたものではなかった。
ゼロの年齢は外見からでは自分と同じ位に見える。
一体いつこんなに傷を負ったのだろうか…自分と同じような年齢で――。


そう思ったとき、ふと何かがルルーシュの頭にぴりっとしたものが走った。

 


ゼロの自室に持ち込んであった自分のパソコンを使って、ルルーシュは改めてゼロの事を調べこんだ。
ルルーシュがゼロの代替わりを確信しているのは、悪帝を倒し世界を支配から解放したあの騒動だ。
それまでのゼロは、戦場にKMFで現れる事はあっても前線で力を振るうというよりは中央で戦局を把握して指示を出すほうであり、このような驚異的な身体能力を保持し、自ら戦局を切り開くタイプではない。
この事に関しては以前調べたときからわかっていた事だ。

その例のシーンが映っている動画を再生する。
悪帝が倒されるシーンはカットされており、ゼロのみに視点が合わされいる。
ではなぜ、悪帝が映されていないのか。
その理由は、第99代皇帝の名前は恐怖の対象とされ、彼が崩れた後は口に出す事はおろか、歴史書や記事にする事も許されなかったことにある。
今現在、彼の名前を知るものは恐らくいないだろう。
その上、名前だけではなく、彼を映した写真や映像、果ては肖像画までが世の中から抹殺されたのだ。

そういう対処をされたのは悪帝だけではなかった。

彼には騎士が一人いたらしい。
当時支配されていたエリア出身の、所謂ナンバーズ出身の騎士でありながら、世界を統べようとする悪帝に身を捧げ、国を裏切った売国奴として非難されていたようだ。
彼に関する全ても、皇帝と同じように葬られ。
彼らはこの世に最初から存在しないかのように人々から消されたのだ。

いや、違う。
情報によると、どうやら悪帝の騎士のほうは当時のエリア11。つまり日本に皇帝が彼の為に建てた墓が残っているらしい。

この騎士や皇帝の件がゼロにかかわるとは限らない。しかし知っておいて無意味な事などは無いだろう。
今はゼロに関する情報なら何でも集めたかった。取っ掛かりになるような何かがあるかもしれない。そう期待してルルーシュは席を立った。
幸運な事にC.C.が部屋にいたので「ちょっと出てくる。」と言い残してゼロの看病を頼んだ。


自室に戻り、変装を済ませて外出の準備をする。

「兄さん出かけるの?」
「ああ。ちょっと、な。大丈夫だすぐに帰ってくる。」
心配げに尋ねてくるロロにやんわりと微笑んで「ナナリーと父さんを頼んだぞ。」といいながら少しひざを曲げ視線を合わせると、小指を差し出し『指きりげんまん嘘付いたら納豆一個』、とルルーシュにとっては恐ろしい約束をしてから基地から外へ出た。


久々に見る外界はあまり変わりが無いように見えた。
テロや軍による弾圧で人々が被害を負わないかということがルルーシュたちの一番の悩みだったが、まだそこまで軍は理性を失っていないらしい。
今、世界は危うい状態で均衡を保っている。もし黒の騎士団の反発や軍の本拠地が奇襲され、大打撃を食らった事が外部に漏れでもしたら大変な事になる事は間違い無い。
日本は表面上だけでも平穏を装わなければならないのだ。


電車を乗り継ぎ、目的地まで向かう。
広大な土地に眠る人を訪れる者は少ない。ここは悪帝に従ったいわば、世界の反逆者が眠る場所だからだ。
あまり人とすれ違いたくないルルーシュにとっては好都合だが、十字架だけが並びあまり整備もされていない風景は彼の心を酷く痛めつけた。
霊園に足を踏み入れる前に軽く目をつぶり、その感情を落ち着かせた。

さくさくと足を進める。
数え切れないほどの十字架。
これほどの人が犠牲になったと思うと背筋が凍るような想いだった。
ふと、一際大きな石碑に目が行く。
ここにあるどの石碑よりも大きく、豪華なそれは高位の者がそこに眠る事を示していた。


石碑を読むと「Knight of ZERO」の文字が見える。
ナイトオブラウンズ。そう呼ばれる皇帝陛下の騎士は数字が与えられている事を知っていたルルーシュは、これが探していた者の墓である事を知った。

「SUZAKU KURURUGI――。くるるぎすざく、か。日本人だったのか…。」

彼のナンバーズ騎士がまさか日本人だったとは。

「くるるぎ、すざく。確かブリタニアに支配されたときの日本の首相は枢木ゲンブだったはずだ。ここまで珍しい苗字だ、親戚か何かか――帰ったら調べよう。」
そう呟くとルルーシュは石碑に刻まれた文字を読み進める。
 


"Here lies a consummate and invaluable Knight to His Highness Lelouch vi Britannia 99th Emperor of the Holy Britannia Empire"


「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……?俺と同じ名前………?」

驚愕の声を上げたルルーシュは体をびくりと振るわせた。
何かが体を駆け抜ける。
電気のような、何かが。

ふらつく体を支えきれず、ルルーシュはその場にしゃがみこむ。

その時、騎士の墓の正面に猫の銅像がおいてある事に気が付いた。
右目のほうにぶちのようなものが掘り込まれている。
その猫は眠る騎士の眠りを守るように彼の墓の前に佇んでいた。
なんの変哲も無いその銅像が、なぜかルルーシュにとってはゼロにつながるピースのように思えた。


痛む頭と自分に何かを与えるような刺激をこらえながらルルーシュは基地へ戻った。
霊園で得た成果は大きい。
まず、葬られた悪帝の名前。
自分と同じ『ルルーシュ』という名前だった事には本当に驚きだった。
そして彼の騎士が日本人であったこと。名前が『くるるぎすざく』ということ。
皇帝の情報はなかなか引き出せないかも知れないが、くるるぎの方はうまくいけば写真くらい見つかるかもしれない。

(まずは枢木ゲンブとの関係性から洗いなおす必要があるな。)
 

自室に戻りロロに帰還を告げ、納豆の刑から無事逃れる事に成功した後、ルルーシュはゼロの部屋を目指した。
部屋に入るとC.C.は席をはずしており、ゼロが一人眠っているだけだった。
顔を覗き込むと外出する前よりも赤みが引いており、熱が下がりかけていた。
ほっと安堵からくるため息を吐くと、額のタオルをはずし水で冷やしてから再び乗せる。
ひんやりとした感触が気持ち良いのだろう、ゼロの顔がすこし和らいだ。
それに釣られる用に顔に笑顔を浮かべたルルーシュは、音を立てないように椅子を引き、テーブルにおいてあるPCの電源を入れる。
立ち上がる合間に大きなマグカップにコーヒーを淹れ、長期戦になるであろう情報収集に備えた。


枢木ゲンブで検索すると沢山の情報が手に入った。
ブリタニアに侵略される以前の日本最後の首相。
エリア11となる前に自殺を図ったとされる。
家系図を確認するとゲンブと妻の間に一人子供がいた事になっている。
消されているという事は絶縁された、という事だろう。

ルルーシュは何の根拠も無く確信していた。
ここにはスザクという名前が入るという事を。

くるるぎすざく、いや枢木スザクの情報を手に入れるのは容易ではなかった。
手間を取らせやがって…と舌打ちをしつつ、ようやく手に入った情報にかじりつく。

『首相の息子でありながらブリタニア軍に従属したブリタニア軍の狗。日本の敵。ランスロットと呼ばれる白いKMFを乗り回し、日本を奪還しようと奮闘する黒の騎士団と対峙し、その指導者であったゼロを殺した事から売国奴とされ日本人から嫌悪された。
ゼロ討伐の功績によりナンバーズとしては初めてのナイトオブラウンズ入りを果たす。
その後、第98代シャルル皇帝を暗殺した第99代皇帝に付き、ナイトオブゼロとなる。
その後支配戦争で黒の騎士団の勇士に敗れ、死亡する。
国や主を裏切り続けたことから裏切りの騎士と呼ばれた。』


その文章とともに添えられた、枢木スザクの写真にルルーシュの目は釘付けになった。

 

「ゼ、ゼロ……?」

 

がばっと振り向いた先で眠っている者とまったく同じといっても等しい人物が。
厳しい表情をして写真に写っていた。


動揺のあまり持っていたマグカップからコーヒーがこぼれたが、それに気づく事も無くルルーシュはただ画面に見入っていた。


先ほど駆け抜けた電気のようなものが、先ほどより強烈にルルーシュの体に襲い掛かる。

苦しい
苦しい
苦しい


悲しい…!!




あふれかえるその波に翻弄される。





「うあああああああああ!!!」



静かな室内にルルーシュの嗚咽交じりの声が響き渡った。

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