「お前はこれからどうするんだ?」
「どうしようかな…もう"ココ"に俺は必要ない気がするんだ。」
「……。なら私と行こう。愛しくも憎らしいこの世界を見て回ろうじゃないか。」
絆~ゆかり~ 2
「ゼロ?」
リヴァルが口にした「ゼロ」という名前。
初めて耳にしたにもかかわらずそれの単語は気にかかった。
「ゼロってなんだ、リヴァル。」
「あれ?ルルーシュってば知らないのか?あんなに薀蓄たれるお前がめっずらしーな。」
常識だろう?心底驚いたという風に目を開いてこちらを見るリヴァルにむっとしつつも、顎をしゃくって先を促した。
リヴァルは指をちっちと左右にふって「よぉ~く聞けよ!」といわんばかりの態度だ。
「ゼロってのはな、平和の象徴で正義の味方だ。」
「平和の象徴で正義の味方?ふんっ…なんだその子供向けの戦隊みたいなのは。」
「本当だって!あの支配戦争を引き起こした悪帝を倒して、世界を平和に導いた人だよ!」
「…それは聞いた事があるが…ゼロなんて名前だったか?」
おかしい。
自分で言うのもなんだが、俺は記憶力がいい。
そんな歴史上で重要な人物を書物で目にしないはずもないし、また授業で取り上げるはずだろう。
現にリヴァルは常識だろう?といわんばかりで生徒会役員の顔を見回し、首肯してもらうことで同意を得ている。
何故だ…何故か引っかかる。
なにかが引っかかるが…ここで悩んでも仕方が無い。
話を進めよう。
「それで、その正義の味方が一体?」
「だから、ゼロのおかげで世界は平和になったんだよ。ゼロはその後世界が優しい世界に向かうように見守ってたって言うぜ。」
「たった一人の存在で世界が一つの目標に向かって進むのか…?」
そんな簡単なものなら、今子の現状だって簡単にひっくり返せそうなものだ。
やはり歴史とは誇張された表現でかかれるものなのか…。
「だろ?!でもそれをやってのけたゼロは凄い!ってことでヒーロー様って訳。」
「私もそう思うわ。私たちがこうして学校に来て勉強できるのも、彼とその後の世界が前向きに手を取り合って進んでくれたからだわ。」
「で、でも…また世界が、戦争を、始めようとしているなんて、寂しいね。」
「ニーナ……。そうね…過去の人たちの努力が今無碍にされようとしているわ。」
自分達はまだ17歳で子供といわれる年齢だが、それでも分かっている。
今、この平穏な日常は危うい均衡によって保たれているということを。
いつ、何が起こって戦争が勃発するかわからない。
人々は日々いつそれが始まるかに怯えながら生活している。
「しかし……リヴァル。」
「なんだよルルーシュ~。」
「どうしてゼロは何処に行ったなんていうんだ?」
「え?そりゃ、ゼロがいまこの状況で現れてくれれば……って思ったわけ。」
「だがその人物は200年前に存在したんだろう?既に死んでいるんじゃないのか?」
「まあな~~でも、そういう存在にすがりたいのが人間ってもんでしょ?」
「気持ち悪いからウィンクするな。
」
そうリヴァルを睨み付けるとはははっと笑いが起こった。
さっきまでの暗い雰囲気が払拭され、ルルーシュはいつの間にか体に入っていた力を抜きほっとした。
(ゼロ…か。帰ったら少し調べてみるか…。ナナリーとロロの世話をした後にでも時間はあるだろう。)
休憩を各々切り上げ書類に向かいだした頃に携帯の着信音がなった。
「あ、私だ。……っと、は~いもしもしミレイ様の携帯ですよv」
相変わらずふざけた挨拶をする人だ…。
ふと会長のほうに視線を向けると笑っていた会長の顔が厳しい表情になっていった。
気が付くと他のやつらも気が付いたらしく何かあったのか?と心配気の表情を彼女に向けた。
「いえ、知りません。今日は学校にも来ていないみたいですし……はい。分かりました。もし来たら御連絡いたします。―――では失礼します。」
緊張した表情で電話を切った会長は携帯電話を手が白くなるほど強く握り締めた。
それをばんっと机に叩きつけうつむいた会長の顔は、彼女の髪で覆われて今はどういう表情をしているのか見る事が出来ない。
少し震える体。もしかして泣いているのだろうか――?
「か、会長…?どうかしたんですか?学校に来ていないってシャーリーの事で何かあったんですか?」
カレンが会長の手から携帯を抜き取りぎゅうっと手をとった。
会長はその手を先ほどのように強く握り締め、うつむいた顔を上げることなく細い声でこう言った。
「シャーリーが、シャーリーの御家族が、一家で失踪したって。」
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私はルルーシュ大好きですよ。
悪帝と書かせていただいているのは、ルルーシュが皆をそう欺きたかったというギアスを酌んで書いております。気分を害された方、申し訳ありません。
ルルーシュの批判をしているというわけでは決してありません!
はじめまして
ありがとうございます!
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