ぼんやりと目を開きゆっくりと視線を室内にめぐらせた。
(――そうか、俺はあのニュースを聞いた後、)
気を失って倒れてしまった。
どうやらあの後咲世子さんが自分をベッドまで運んでくれたようだ。
男として女性に運ばれるのはプライド的にあれだ。プライドは高いほうだと自覚しているから更に。
しかしあのニュースで倒れるとは情けない。
ショックを受けて倒れている場合では無かったのだ。
自分は父がいない今、ナナリーとロロを守らなければならない。
父の今後を心配し対策を練りこそすれ、倒れるなど言語道断。
軍事法廷は執り行われたのだろうか。
自分の父は一体どうなったのだろうか。
サイドテーブルに置いてあるリモコンを手にとってテレビの電源を入れる。
咲世子さんが消してくれたであろうテレビのチャンネルはニュースのままで、ルルーシュはリモコンをテーブルに戻した。
時刻は7時丁度。
昨晩LIVEで報道されたほどのニュースならばトップニュース扱いに違いない。
そしてルルーシュの耳に入ってきた情報は。
無情にもにも軍事裁判により自分の父とシャーリーの家族に第一級国家反逆罪及び脱走罪がかされるというもので。
第一級国家反逆罪の処罰は、
――処刑だった。
(許されるものか…こんなことが。こんな、国、間違ってる!!)
信じられない判決を耳にして一時気が遠くなったものの、その後沸いてくるのはどうしようもない怒りと憎しみ。
(こんな国、腐ってる!!)
力を入れすぎて震える拳をバン!と思いっきり壁にぶつける。
そのまま壁にしなだれかかるように体を預けたが、足の力がぬけ座り込む。
憎しみ、驚き、怒りなど様々な感情が溢れ孵り考えがまとまらない。
一体これから自分はどうすればいいのだろうか。
そう考えたときに「はっ!」と風邪で寝込んでいた弟妹のことを思い出した。
(そうだ、自分はナナリーたちを守るんだ!)
力の入らない足に叱咤し、「よし!」と気合を入れて自室を後にした。
「兄さん!!」「お兄様!!!」
リビングに行くと弟妹が不安で目を潤ませながら駆け寄ってきた。
テレビが付いているところから察するに、彼らも父に何が起こっているのかを知ったのだろう。
「信じられない!なんで父さんが…人を助けようとした父さんが処刑されないといけないの?!」
「お父様は悪い人じゃありません!処刑なんて…そんな、そんな…!!」
そうだ。自分の父はお人よしで、虫も殺せないようなヘタレな男だった。
『汝、隣人を愛せ』を地で行くような人で、いつかだまされて連帯保証人にでもなってしまうんじゃないかと本気で心配したこともあった。
その父が。今、腐りきった国家に殺されようとしている。
そして、それの事実に弟妹達は動揺と悲しみを抱えている。
許すものか…自分の家族を奪い、傷つけるこんな国。
許すものか……!!
心にどす黒いものが溢れてくる。きっと気を緩めれば自分は醜い形相をしてしまうのだろう。
そんなそぶりを微塵も見せず、いつもみせるような明るい笑顔を二人に向ける。
床に方膝を着いて視線を合わせ、二人の腕を優しく掴んだ。
「大丈夫だよ、ナナリー、ロロ。父さんは悪いことなんて何一つしていない。」
「う、うん…でも…自衛隊が…」
「大丈夫だロロ。心配するな。きっと大丈夫だ。」
「本当ですかお兄様?」
「ああ、だから泣くな、ナナリー…きっと、きっと大丈夫だ。俺が今までお前達に嘘をついた事があったか?」
そういうと二人は同じタイミングで首を横に振った。
その様子にくすっと笑みがもれ、それを見た双子の涙も徐々にとまり、ぎこちなく笑顔を向けてきた。
「俺たち家族が父さんが無事に帰ってくることを信じなくてどうする。きっと帰ってくるさ。」
「う…ん…そうだね、兄さん。」
「ああ。ほら、朝食にしよう。せっかく治った風邪をまたぶり返すぞ?」
「「はーい!」」
俺はナナリーとロロの為に、父さんの為に。
家族の為に。
この腐った国を変えて見せる。
ルルーシュはぎらりと光った眼を自覚しながら唇をゆがめ怪しい笑みを浮かべた。
(『ゼロ』、お前の姿借りさせていただく。)
こんな国、俺がぶっ壊してやる。
ルルーシュの中に『ゼロ』という存在が生まれた瞬間だった。
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やっとココまで来た…。
文才が無いのでうまく表現できていませんが、ルルーシュを早くゼロにしたくてたまりませんでした。(笑)
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