side快新+服部
もったいぶって面白い情報とやらを話す服部にいらいらしつつも、新一と快斗は内心服部をほめたたい気持ちだった。
『あんな?皇子が持ってくる宝石なんやけどな、どうやら彼の母親のマリアンヌ元后妃が皇帝陛下と結婚する際につけたっちゅう由緒ある品らしいで。せやけど、なんやら曰く付でな、持ち主を選ぶらしいねん。宝石が所有者と認めんとつけた者には悲惨な最期が待ってるっちゅー話や。大きな紫色の宝石らしいで。』
「…不老不死とは関係なさそうな曰くだな。」
服部が風呂に入る事で、ようやく先ほどの話を口に出来た。
本当はあの場で快斗と話し合いたかったが、如何せん服部は快斗の正体を知らない。
もとより教えるつもりはない。まっすぐで誠実な彼には、新一のように探偵でありながら怪盗を擁護するといった矛盾を抱えて欲しくないのだ。
新一がこの矛盾を享受できるのも、それをかるく消し去ってしまうくらい快斗の事を思っているからだ。
きっと快斗もそうなのだろう。
「そうだな。でもビッグジュエルって言われちゃ確認しないわけにもいかねーだろ?」
「ってことは…出すのか?」
「ああ。もう準備してあるさ。服部が寝ちまった後にでもこっそり出してくる。」
どこからともなく光沢のある白い封筒を取り出し、新一に見せる。
手元にあったタオルで手を覆ってからそれを受け取り、『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア皇子殿下へ』と書かれた封筒を見る。
「これって直に警察の手に渡るのか…それとも皇子に渡して開封してもらってから確認するのかで結果が分かれるな。」
「なんでだよ?」
「皇子がもし暗号を解けなかったらどうすんだよ…一国の皇子だぜ?プライド高そーだし、警察の世話になんかならねーとか言い出しかねないんじゃねーの?」
「ははっ!ま、そうなったほうが俺的には楽だけどね。――っと、服部が上がったみたいだな。」
「ったくあいつは…風呂場で歌うのはかまわねーが、うっせーんだよな…。」
「まあいいじゃん!ずっと六甲卸で飽きるけど!」
「うっさくて悪かったな~」
タオルを片手にガシガシと髪を乾かしながらリビングに入ってきた服部に、快斗がまたもやマジックで何かを取り出して渡す。
「お~風呂上りの一杯はこれに決まりやな!――って何させん!」
「あははは!おめーマジ似合うじゃん!瓶入り牛乳!!」
「ぷっ……!」
げらげら笑う悪友二人をむすっと睨み付けながら「そない笑うならお前ら、明日連れてったらんぞ……」と脅す。
それを聞いて慌てて「「申し訳ない、服部殿」」と謝り倒す羽目になった。
sideスザルル
「殿下…それ以上書類を機内でお読みになると、乗り物酔いなさるかと…。」
「うるさい。今のうちに見ておかねばならい資料なんだ。」
飛行機内に設置された執務室のデスクに座り、書類をめくるルルーシュにスザクは紅茶を差し出した。
それに「ありがとう」と礼をいい、片手に書類を持ったまま口に運ぶ。
ルルーシュは書類をいじっている時に飲み物を飲む事をあまりよく思っていないようで、こういった場合は疲れが表れている兆候としてスザクは認識していた。
「差し支えなければ内容をお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ……それよりスザク。今は誰もここには居ないんだ…普通に話せ。」
「しかし……」
確かに他の護衛らは個室タイプになっている部屋の外に出され、そこから警備しているようでルルーシュとスザク以外この部屋には居なかった。
しかし誰が傍耳を立てているとも分からない状況で、口調を崩す事は軽率ではないだろうか…。
「ここは防音だ。大丈夫だ……な?」
そういいながら上目遣いでデスクの横に立ったスザクを上目遣いして見つめる。
(くっ…!卑怯な!)と思いつつも、そう恋人にねだられては拒否できないこれが、惚れたほうの負けという事なのだろうか。
甘いよな…と思いつつ、慇懃な対応をフランクなものへと崩す。
「分かったよ……それで?なにの書類見てるんだい?」
「怪盗KIDと日本警察の戦歴だ。」
「戦歴って…戦争してるわけでもあるまいし…。犯行記録を見ているんだね。やっぱり『マリアンヌ』も狙われると思う?」
「奴が狙う宝石のほぼ9割がビッグジュエルと呼ばれる、一定のサイズを超えた宝石だ。『マリアンヌ』は十分にビッグジュエルの範囲に入るからな。用心に越した事はない。」
「そう……。で?その戦歴とやらはどう?」
「だめだな…ここまで無能だとは…。誰か捜査二課にKIDを支援する奴がいるのではないかと…指揮官が支援者なのかと思わせるほど、KIDに有利になりかねない警備をしている。」
「あはは。ルルーシュに言わせたらどんな警備でもそうなっちゃうんじゃない?」
「しかしこの探偵が参加したときの警察の動きには目を見張るものがある。」
「探偵?」
「『工藤新一』――高校生探偵らしいぞ。」
にやり、と笑む顔をきょとんとした幼い表情に変え、高校生探偵ってなんだ?と聞く恋人の言葉に自分も頭を傾げる。
高校生の後に職業を付け足すのだろうか、最近の日本語は。たとえば高校生美容師とか…高校生サラリーマン…とか?じゃあ僕は年齢的に高校生騎士になるのだろうか。変な感じだなと思いつつ、「多分高校生の年齢であるのに探偵として才能を発揮しているって意味だと思うよ。」と答えた。
それにふーん。と納得したような納得しないような返事を返し、ルルーシュはふむ、と頷く。それに「?」と思っていると。
「じゃあ俺は高校生皇子、というわけだな。」
と自分の『高校生騎士』と同じく頓珍漢な単語を思いつく恋人にスザクはあははと笑った。楽しそうに笑うスザクをみて、ルルーシュもようやく張り詰めた雰囲気を崩し、くすりと笑んだ。
機嫌よく紅茶を口にする彼の柔らかい髪をさらさら梳きながら、先ほどの恋人のにやりとした笑みを思い出す。
「で?何をたくらんでいるわけ?」
「ふっ…俺はまだ対外的に実力を見せ付けるときではないと思っているんだが…。」
「そうだね。」
「しかし怪盗KIDなぞに母上の宝石をくれてやるわけにはいかん。そこで、だ。KIDと相対し勝暦をあげている人物に警備を任せる…というわけだ。まあ、予告が出されたらの話だがな。」
「なるほど。…僕はどうすればいいの?いつもどおり動いていい?」
「お前は普段どおりでいいさ…それ、頼んだぞ?」
真剣な表情で『それ』と示されたものに服の上からそっと手を当て、彼の期待に必ずこたえてみせるという意思を込め、「Yes,your highness.」と返した。
その一時間後、日本政府からルルーシュ・ヴィ・ブリタニア皇子殿下に対して怪盗KIDから封書が届いたという連絡が入った。
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